宇多田ヒカル / WILD LIFE

もうすぐ宇多田ヒカルが6年の休息を経て新譜を出すということで、最近よく流しています。

「自分を見失いかけていた」「自分を大切にしていなかったと気づいた」と、歌手であることに疲れていたにもかかわらず、ずっと曲を作ってくれていたことが純粋に嬉しい。

横浜アリーナで行われたラストになってしまったかもしれないライヴ、舞台演出も含めて魅せる、大掛かりなパフォーマンスはここにはありません。きっともっと歌が巧い人も他にいるでしょう。

それでも心奪われてしまうのは、どうしようもなくせつない歌声ですね。歌詞が隅々まで届くその歌声には、葛藤だったり哀しみだったり孤独だったり母への思慕であったり、15歳から駆け抜けた12年間の彼女の人生模様が刻まれている。

「どんなにつらい時でさえ歌うのはなぜ?」と、泣いているかのような熱唱が印象的な「BLUE」、伏し目がちな瞳で私たちを見つめる姿が愛おしい「Stay Gold」、もっと声がほしいとねだる姿が新鮮な「虹色バス」など、どれも粒ぞろいの名曲のオンパレードなのだけれど、最も突き刺さったのはアンコールを締めくくる「time will tell」ですね。けしてハッピーゴーラッキーな曲調ではないし、初めて手がけた曲ということもあり、歌詞も簡素。でも年を重ねるにつれて深みを増す歌ですね。

泣いたって
何も変わらないって言われるけど
誰だって
そんなつもりで泣くんじゃないよね

(中略)

Time will tell 時間がたてばわかる

Cry だから今は泣きたいだけ泣いていい

もっと もっと もっと

time will tell」より

曲中繰り返される「時間がたてばわかる」という言葉にこめられた、生きていればいろんなことがあるけれど、それでも前を向いて行こうよ、と、聞き手を包み込むような優しさに胸が熱くなる。

「自分を大切にできなければ誰かを大切にはできない」と語っていた彼女が、結婚して母となり”普通”の幸せを手にした「今」、どんなアルバムを出してくれるのか。28日が楽しみです。