窮鼠はチーズの夢を見る(日本/2020/監督行定勲)

f:id:lysis:20190307144336j:plain

優柔不断な性格から不倫ばかりしてきた大伴恭一(大倉忠義)の前に、ある日、妻から派遣された浮気調査員が現れる。その調査員は、卒業以来会っていなかった大学の後輩・今ヶ瀬渉(成田凌)だった。彼は、体と引き換えに不倫を隠すという取り引きを恭一に提案する。恭一は拒否するが、今ヶ瀬の真っすぐな気持ちに触れるうちに、二人の時間に少しずつ心地よさを感じるようになる。(シネマトゥディより)

アマプラにて鑑賞。

ちょっと岡崎京子の漫画にも通じる、愛し愛されて生きたい、ただそれだけなのにすれ違ってしまう恋愛のもどかしさ、愛がもたらす痛みと喜びが繊細かつ丁寧に描かれていましたね。

(※以下ネタバレを含みます。)

予想以上に性描写が生々しかったですが、二人の関係性の変化を描く上で必要なシーンでもあったので、ポルノ的なそれとは感じなかったです。むしろ切なくなってしまった。最後(とは片方は気が付いていない)のセックスの美しさといったらなかった。あんな優しいキスをされたら逃げたくなってしまうでしょう。

インテリアも素敵で、いろんな意味で開けたBL要素強めの恋愛映画でした。男性でも共感しやすいのでは。

はちどり(韓国・アメリカ/2018/監督キム・ボラ)

f:id:lysis:20200729201557j:plain

 

驚異的な経済成長に沸く1994年の韓国、ソウル。14歳のウニは、両親、姉、兄と集合団地で生活している。小さな店の経営に追われる両親は子供たちと向き合う余裕がなく、兄は父に期待されている重圧から親の目を盗んでウニに暴力を振るっていた。自分に関心のない大人に囲まれ孤独感を募らせるウニは、通っている漢文塾で不思議な雰囲気を持つ女性教師ヨンジと出会う。(シネマトゥディより)

 

TOHOシネマズ日比谷にて。

 

とてもよかったです。もう忘れてしまった感情とでもいうのかな、14歳のわたしを呼び起こされる瞬間が何度もあり、泣いてしまった。

 

(※以下ネタバレを含みます。)

 

主人公のウニはいつもどこか一点を見つめている。大人でも子供でもない、どこにも属せない所在なさ、まだ他人のことどころか自分のことさえもよくわからない憤り、しんしんと募る孤独感から"わたし"という存在を傷つけられまいと必死に心を守っているように見えた。

 

そんなウニを最初に見つけてくれたのは、家族でも友人でもボーイフレンドでもなくヨンジ先生だった。

 

大人の真似事で吸ってみたタバコをなれた手つきで吸う様、子供だからといって子供扱いしない厳しさと優しさ、本質をつく言葉の数々。会った瞬間から憧れてしまう。同時にこの人なら信用できる、とも。

 

初めてストレートに感情をぶつけられた瞬間は涙が止まらなかった。

 

また徹底した14歳目線で語られるこの映画は“視線”がキーになっていて、それもストーリーに奥行きを持たせていましたね。重なり合う愛もあれば、一方通行のそれもまた愛である。

 

映画は、ぼんやりとしていたウニの視界が、これまで彼女に見えていた世界が、目に映るすべての景色が変わり始める予感を感じさせて幕を閉じます。

 

ウニの未来はけして明るいだけではないでしょう。多分この先も理不尽だったり小さな諍いやすれ違い、むしろ苦悩することの方が多いでしょう。でもわたしはこれまでのように無防備に苦しむ姿はもうないと思うのです。つまづいても転んでも、自力で立ち上がる姿がなぜかわたしには見えるのです。

 

そうあってほしいと願う。

 

だって世界は不思議で美しいのだから。

 

f:id:lysis:20200729201737j:plain

 

プライベート・ウォー(アメリカ・イギリス/2018/監督マシュー・ハイネマン)

f:id:lysis:20190830200857j:plain

The Sunday Times の特派員メリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)は、スリランカ内戦を取材していた2001年に左目を失明する。PTSDに苦しみながらも、世間の関心を紛争地域に向けるために彼女は戦場を駆け巡る。2012年、シリアで過酷な状況下に置かれた市民の現状を世界に発信しようとホムス入りしたメリーは、命懸けのライブ中継に挑む。(シネマトゥデイより)

アキバシアターにて。試写会で観てきました。

 

戦争と無縁だった世代の日本人からすると破天荒すぎる彼女の言動に政治を持ち込まない/キャッチコピーとは裏腹な、闘う女性を型にはめないスタンスはとてもよかったのですが、感想を問われると困ってしまう。

 

というのも劇中一番響いたのは、シリアでショックのあまりに母乳が出なくなった女性が放った「記事だけにしないで」という一言だったからです。それは鑑賞者である私たちに置き換えると「感想だけにしないで」とも受け取れる警告で、今はあまりにこの手の映画が増えすぎてしまったし、観すぎて「わかった」気になってしまっているな、とも。

 

また試写会後のトークショーで出た、私生活では性に奔放なメリーに対し「介護経験があると人のぬくもりが恋しくなるのはわかる気がする」という解釈は興味深かったですね。

色々なことを再考するきっかけになりました。

工作 黒金星と呼ばれた男(韓国/2018/監督ユン・ジョンビン)

f:id:lysis:20190826210057j:plain

1992年、軍人のパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は北朝鮮の核開発の実態を把握するため、コードネーム「黒金星」という工作員として北に潜入する。3年にわたる慎重な工作活動の末、彼は北朝鮮高官や上層部と確固たる信頼関係を築く。しかし1997年、大統領選挙をめぐる祖国と北側の裏取引によって、命懸けで行ってきた工作活動の意味がなくなってしまう。(シネマトゥデイより)

シネマート新宿にて。滑り込みで先日観てきました。

 

とっても面白かった…!パンフレットまで買ってしまったのは久しぶりですね。感想を書きたい、と思わされたのもいつぶりだろう。それくらい心動かされるものがありました。『グリーンブック』『存在のない子供たち』と並んで、今年の館内鑑賞作品の暫定トップ作品に。

 

言葉による攻防戦といったかんじで、ロシアやハリウッドのような派手なアクションはなく、淡々と繰り広げられる駆け引き、己を殺し、ストイックにミッションに挑む反面、内に秘めたそれぞれの想いと思惑が交錯する。スパイ映画でありながら、“国境”とともに友情を超えた志で結ばれた男同士の絆を描いたヒューマンドラマでもありました。

 

パクが工作員にしては人間臭すぎるところもありますが、ひととしての誠実さが失われない部分が私には好意的に映りました。また好対照なリ所長の佇まいがいいんですよね。聡明かつ時に大胆な勝負師の顔を持つ男。それでいて熱い何かを感じさせる情熱的な一面もあり、パクがとある殺し文句で口説きたくなるのもわかる笑

 

また韓国映画特有の硬派な印象を保ちながら、社会派、ヒューマン、サスペンスのバランスがよくて、良質な娯楽作品になっていましたね。歴史背景にさほど詳しくなくても、入りやすいのでは。

 

終演間近ですが、一人でも多くの人の目に留まってほしいなあ。名作。

人はいるべきところに流れ着くもの

lysis2019-01-15

友人に「結婚してからのはあちゅうさん、わたし好きなんだよね」という話をしたら、訝し気な反応だったので、就職サイトにあったインタビューをかいつまんで話すと、驚きとともにとてもほっこりして。

「今まで格付け社会で生き抜くために”見栄え”で武装していた(意訳)」というあっけらかんとした告白とともに「人はいるべきところに流れつくものだから、大丈夫」とエールを送る彼女は、これまで抱いていた良くも悪くもがむしゃらな印象とは正反対の、とても自然体な語り口で眩しかったんですよね。

インスタなどで日々綴られるしみけんさんとのやり取りは、色眼鏡を外すと、ごく当たり前の、ふつうの幸せを手にした女性のそれで。結婚の決め手になった「この人と一緒にいたい」というとてもシンプルな、でも(結婚において必要であろう)決断とその代償に対する意志があって、そこも強いなって。

外野が懸念しているであろう「離婚」を仮にしたとしても、今の自由な彼女がわたしは嫌いではなくて、やはり眩しいんですよね。

大人になると出来上がってしまった自我や価値観を変えるのって難しいし、勇気を出すことに臆病になってしまうものだけれど、「自分も変われるのかな?変わってみたいな」と思わされるエピソードでした。

※ちなみに参照インタビューは↓

「#生き方コンパスVol.1:はあちゅう「人はいるべきところに流れ着くもの。だから安心してください」
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/54184

ラ・ラ・ランド(アメリカ /2016 / 監督デイミアン・チャゼル)

lysis2017-12-29

何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。
シネマトゥデイより)

諸事情により2回劇場鑑賞しました。

(以下、ネタバレあり)

この映画を一言で言うならば「夢追い人の結末や如何に」なのですが、2回目の方がラストにしっくりきました。互いに夢は叶えたものの“二人”で叶えたかった夢は叶わなかったわけで。だからこそ蜜月の二人が光り輝くのだなあ、と。

ラストシーンで見せたセブの瞳がこの映画の全てでしたね。

冒頭のカメラワークやカラフルな衣装とダンスよりも、現代風でいて根幹はシンプルで王道なラブストーリーなことも印象に残りました。

好き嫌いは別として、大衆の心をつかむのが上手い/取捨選択がはっきりしている監督だな、とも。

あとはやっぱり音楽がいいんだなあ。

『セッション』が受け付けなかった人にも機会があれば観てほしいかも。

久しぶりにスクリーンで観るゴズリンは何度見てもキュート!だしね。

浅田真央展

日本橋高島屋にて。滑り込みで昨日観てきました。

DVD「Smile Forever」発売の販促イベントで、5歳からの21年間を衣装とともにダイジェスト映像を交えて振り返るという内容だったのですが、私も5歳から19年間ピアノをやっていたので、おこがましくも感じ入るものがありましたね。

私も7歳くらいまでは緊張というものを知らず、楽しさだけで無邪気に弾いていたけれど、緊張することを覚えてからは、本番で100%出すには普段100%を超える練習をしないと自分に勝てないとか、悔しさをバネにしていたところがあるので。

観終えた感想は、なぜ彼女がみんなに愛されるのか、改めて浅田真央のスケーターとしての偉業とともに尊敬に値する人格面の素晴らしさを再確認するイベントでしたね。もうしばらくこんな選手は現れないだろうなあ、とも。

艶やかな衣装の数々とともにあった、使い込まれたシューズが印象的でしたね。いくつもの靴をボロボロにして闘ってきたのだろうか。

先行発売されていたDVDの感想はまた後日にでも。